2010/03/22

梅田望夫『ウェブ進化論』を読んだので…




梅田望夫・著『ウェブ進化論 ―本当の大変化はこれから始まる』 読了.

今更ですけどねー

もちろん,例の騒動のことも知った上で読んだ.
むしろ,知ったからこそ,どういうことなのか自分の目で確かめてみようとも思ったのだった.

とりあえず,小飼弾氏に倣って,目次をば:

  • 序 章: ウェブ社会 ― 本当の大変化はこれから始まる
  • 第一章: 「革命」であることの真の意味
  • 第二章: グーグル ― 知の世界を再編成する
  • 第三章: ロングテールとWeb 2.0
  • 第四章: ブログと総表現社会
  • 第五章: オープンソース現象とマス・コラボレーション
  • 第六章: ウェブ進化は世代交代によって
  • 終 章: 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
  • 初出について
  • あとがき
率直に言って,4年前(実際に執筆されたのは2005年だろうけど)にこの内容を書いていたのは凄いことだと思った.
4年の間に実際に体験していることもあるので,多くは"復習"に過ぎないのだけれど,それでも言葉としてまとめられているのを見ると,自分の中の認識が他人の表現によって鮮鋭化されていくのを感じた.
その点については,件の騒動はどうあれ,本書の価値が貶められることはないだろう.
たしかに,Google礼讃一本やりという批判はある.しかしこの4年,Googleの存在は弥増すばかりだったわけで,その点においても著者に先見の明があったのだ――というのは甘すぎるだろうか.

"復習"と書いたが,この4年間を追体験できるということは,本書のあと書きにもあるような「若い世代」と「大人」のジェネレーションギャップを埋めるためのブリッジとしては使える一冊になっていると思う.
そしてそれこそが,多くの年配経営者を相手にコンサルティングを続けてきた著者の真骨頂でもある.
その点において,この本は成功だったのだと思っている.

一方で,他の章に比べて第五章が大きく精彩に欠くのは確かだ.これではオープンソースをまったく理解していないと言われても仕方がない.
でも,ちょっと強調しておきたいことが一点.
実はこの第五章,見出しに「オープンソース」と書いておきながら,実は著者はいわゆるオープンソースについて語る気は最初からないのだ.
これは本書p175を読めばわかる:
ソフトウェア世界を超えたところでの「オープンソース」的な営みを「オープンソース現象」と呼ぶことにする。
 全36ページある第五章の3ページ目(扉ページを含むので実質2ページ目)でこう定義してからは,ずっと著者の定義する「オープンソース現象」について語っている.
この定義は見るからにいただけないが,それでも「ソフトウェア世界を超えたところ」と書いてあるので,少なくともソフトウェア開発者である我々が難癖をつけられる世界のことを指しているわけではないようである.
だから,オープンソースソフトウェアの見地から本章にケチをつけるのは,実は的はずれなのではなかろうか?

にも関わらず,こんな紛らわしい名前を与えてしまったのだから,非が著者にあるのは否めまい.これは完全にテクニカルタームの選択ミスだ.
しかも,もともとがいただけない定義なのにも関わらず,そのあとで「広義の「オープンソース現象」」なんて表現が出てくるもんだから,もうワケワカメな状態になってしまっている.
だからオープンソースを語るな!とか言われちゃっても,仕方がないということだ.
(まぁ,それをいったら,Thomas S. Kuhnだってparadigmなんて単語を使ってしまったばっかりに炎上しちゃったんだから,テクニカルタームの選択はそうそう上手くいくもんではないんですよねぇ

では,ひが氏が言うように「オープンソース」ではなく「バザールモデル」という用語にすれば良かったのかというと,個人的にはそれもちょっと違う気がしている.
というのは,著者が「広義の「オープンソース現象」」としてあげている「グーグル・ブックサーチ」や「ブッククロッシング」がバザールモデルに当てはまるのかと言ったら,あてはまらないように思うのだ.
うーん,残念ながら,自分には適切な単語は思いつかない・・・
(※バザールモデルへの置き換えの是非については,ktdisk氏が別の観点から言及しているので,興味がある方はご一読を)

思うに,オープンソースとか集合知とかマス・コラボレーションとか,それぞれに異なる現象を十把一絡げに「オープンソース的なもの」として説明づけようとしてしまったところが,すべての失敗の始まりなのだろう.
まずは精細な対象の分析をしなかったことが,本章が精彩に欠く理由というのが自分の見解だ.

あと,ついでなので,もひとつ苦言を.
終章の見出しから自分は,読者に対して今後進むべき指針を示すような期待感を受けたんだけど,読んでみると,なんだか著者の近況報告と私信みたいになってしまっている.
こんな内容できれいっぽくまとめようとするくらいだったら,「大変化がどんなものかはわかんないけどね!」と開きなおって,読者を新時代の荒波に向かって投げっぱなしにするような内容のほうがよっぽど面白かったんじゃないかって思う.
はてな社での仕事にwktkしてたのはすっごく伝わってくるけど,それはあとがきに書くべきだったんじゃないかなぁ・・・




まぁ,色々書いてきましたが,個人的にはオススメの一冊です.
今度,ウチの親父様にも読ませようw

さて,話はガラリと変わりますが,本書第五章で『「みんなの意見」は案外正しい』に言及しているところで,ふっとスタジオジブリの鈴木敏夫の言葉を思い出したんです.ちょうど本書と並行して『仕事道楽 スタジオジブリの現場』を読んでいたからっていうのもあるんでしょうけどね.
その言葉というのは,
自分は信じない 人を信じる
ちなみにこれは,『仕事道楽』の中に書いてあることじゃなくて,NHKの有名番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で鈴木敏夫プロデューサーが取り上げられたときにキーワードとして使われたもの.DVDのタイトルにもなってますね.
番組中では,壁にぶち当たったときに人に答えを求める鈴木プロデューサーの流儀を象徴する言葉として使われている.
これってなんだか,うまいこと集合知を使っているように思えたのだ.

特に,ジブリ映画のキャッチコピーに,なぜかしら世相感というか,現代的なメッセージを感じてしまうのは,こうした鈴木プロデューサーの手法によっているんじゃないだろうか.
しかもこれは,「企画は半径3メートル以内にいっぱい転がっている」という宮崎駿監督の映画作りにも繋がっている気がする.(この言葉の意味するところは,是非『仕事道楽』を読んでお楽しみいただきたい)

それから鈴木プロデューサーと言えば,パーソナリティを努めるラジオ番組「ジブリ汗まみれ」にGoogle Japan社長の辻野晃一郎氏がゲストで出演した際に,件の『ウェブ進化論』を読んで対峙している.
そいでもってそこで,iPhoneのビジネスがすごく古臭く見える,スティーブ・ジョブズは旧来の人,と一刀両断している(!).
その見解が正しいかどうかはさておき,その鈴木節は実に痛快だ.
興味がある人は,バックナンバーがあるので聴いてみると面白いと思います.2010/01/19配信の回ですよ.

ところで今回,調子に乗ってアマゾンのリンクをぺたぺたと貼りまくってしまったけど,邪魔かなぁ・・・?
邪魔だったら言ってくらはい.

さて,次は弾さんの教えに従って『グーグル 既存のビジネスを破壊する』を読むかー